読むロジョン / スローガン28

トンレン瞑想 ロジョン Jun 25, 2022

Slogan 28

Abandon any hope of fruition.
どんな結実の望みも放棄する。


 
 ロジョンや瞑想の練習はとてもゆっくりと進みます。突然何かが閃いたり悟ったりはしないものです。急いで何かを掴もうとか、得ようとする態度でロジョンに向き合うとうまくいきません。うまくいかないどころか、弊害を生じる可能性すらあります。

 今回のスローガンは、毎日の練習によって、自分が人より優れた人間になる可能性を放棄すべきだというインストラクションです。ロジョンを実践することで、自分がより良い人間になるものだと信じていたり、経験を積めば多くの人の前でその経験・知識を披露して、生徒や友人に感銘を受けさせることができるかもなどと夢想する場合もあるかもしれません。しかし、こうしたことはすべて、私たちの自己中心的な考えから生じています。「私が、私が、」とエゴが声高にそれを主張しているに過ぎません。Egomania(エゴマニア)になってしまっているのです。だからこそ、このスローガンは「そうしたものを放棄するべきですよ!」と言っているわけです。

 ロジョンを含め、ブッダダルマ(仏教の理論)を学ぶ際には、突発的で一時的な啓示や特別な体験や、苦行を通して何かを「成し遂げる」ことが必要だとは言いません。しかし、私たちの日常を振り返ると、何かを達成することに心が囚われている事も少なくありません。

 仕事でもプライベートでも現実と関わることで、私たちは何かを成し遂げた事もたくさんあります。有能なビジネスマンとして重要なポジションで働いているかもしれませんし、有名な心理学者となって人々の神経症を治しているかもしれません、音楽家として成功しているかもしれませんし、マインドフルネスやヨガのインストラクターとして売れっ子になっているかもしれません。しかし、こうした一見成功していると見えがちな私たちと現実との取り組み方は、エゴの基盤に基づいた、自己中心的なスタイルで世界と付き合っているに過ぎません。ある意味で「プロの自意識達成者」、「プロフェッショナル・エゴマスター」としての経験と能力をフルに発揮してるといえるでしょう。

 そうしたある種の「成功体験」があると、人生経験を活かし、今までと同じエゴマニア的な取り組み、エゴ・プロの視点で、瞑想やロジョンに向き合おうとしがちです。今まで同じ方法、同じ考え方で練習に取り組みで成功を収められる、または悟れると思ってしまいます。

  自分の本質である、エゴに基づかない心を騙して、上手くやれるのではと期待しているのです。しかし残念ながら、それはうまく行きません。エゴに囚われたものの見方はある意味、状況に対しての不安と期待からくる誤認で構成されています。物事を「ありのまま」に見るということは、そうした誤認を取らない限りは一向に見れない世界とコミュニケーションする事です。このスローガンは、「私」が求める幸福や喜び、名声や悟りの境地などといったものを願ったり、求めていること自体が、『エゴまみれで問題ですよ!』と注意喚起してくれいるのです。